遠野のジンギスカン

ある夏、一人旅で岩手へ行った。 岩手で働いていた人から話を聞いてぜひいきたいと思って。 宮沢賢治も大好きだし、岩手についた瞬間から、大きな岩手山が見えて、ああ、賢治の風景だ、と思ってワクワクした。 一人で花巻も龍泉洞もいった。 当時一日二通しかなかった電車で遠野にいき、岩手を勧めてくれた友人おすすめの遠野のジンギスカンを一人で食べた。 なぜ遠野といえばジンギスカンなのか、いまだにわからないけど、社会人になって数年、必死で休みもなく働いてきて、やっと一息ついて初めてしっかりとれた夏休みのジンギスカンは、とてもおいしかった。 おいしいね、と言える相手がいないことがさみしくもあったけど、この旅は一人がよかったんだろうと思った。

もいもい

  • 忘れられない旅ごはん

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おばあちゃんのあげぱん

私にはおばあちゃんがいます。 正確には居ました。今はお空の上でひいおばあちゃん達と仲良く暮らしてると思います。 突然ですが私は揚げパンがとても大好きです。小さい頃からよくおばあちゃんが揚げパンを作ってくれていました。 ただ コッペパンを揚げる揚げパンとは違い食パンを四等分にしみみを切り正方形のまま揚げてお砂糖をまぶす至って簡単な作り方です。 1度に作る量が多いので毎回こんなに食べきれないよ〜と思いつつも結局美味しくてほとんど1人で平らげてしまうほど美味しかったんです。 おばあちゃんは私が成人する3ヶ月前に亡くなりました。 いつも何かあるとおばあちゃんに助けてもらいおばあちゃんの作ったご飯を食べ一緒に寝るのが本当に大好きでした。 亡くなってからは大好きな揚げパンを食べることが無くなり市販の揚げパンでは物足りなくどうしてもコッペパンの揚げパンではなくおばあちゃんが作ってくれたあの揚げパンが恋しかったんです。 ある日母が揚げパンを作ってくれました。 食べる気にもなれず そう伝えようと思い母が出してくれた揚げパンを見るとおばあちゃんの作った揚げパンと似ていて思わず1つ手に取ってしまいました。 とても美味しくておばあちゃんの作ってくれた揚げパンよりほんのちょっと甘めで それでも気がつくと泣きながら食べていました。 揚げパンが大好きな私を見兼ねて普段そういう料理を作らない母が作ってくれたことが何よりも嬉しく思いました。 あの時揚げパンを作ってくれた母には感謝していますし今では自分でもおばあちゃんと母が作ってくれた揚げパンを真似して作っています。 いつかおばあちゃんに私が作った揚げパンを食べて欲しい なんて思いながら。

しょくぱん さん

みそピー

給食にときどき出てきたみそピーは、味噌と砂糖とピーナッツを練り合わせた、少し甘くてしょっぱい食べ物で、小さなビニールのパッケージに入っていた。私は甘いとしょっぱいを同時に感じるのが嫌で、なんとなく苦手だった。それなのに、給食と言えば思い出されるみそピー。大人になった今なら、美味しく感じたりするのだろうか?

よく噛んで食べよう さん

おこげで学んだ母親の優しさ

中学校の修学旅行で、仲の良い友達同士の班で飯盒炊爨に挑戦しました。料理なんてしたことのない悪ガキたちでは綺麗にご飯が炊けるはずもなく、お米は真っ黒焦げに。でも、僕たちにはそれが妙においしく感じられ、家に帰ってからも母親に"おこげ"を注文しました。「あんた、家では焦げを作る方が大変なのよ」と一度は断られたものの、不貞腐れる僕を見て"おこげ"のある焼きおにぎりを作ってくれました。時が経ち、家庭を持って料理をするようになると、母親の気持ちが分かるようになりました。母親を見習って、息子からの料理のリクエストにはなるべく応えるようにしています。

こしらず さん

よく噛むことの効果!?

私は子供の頃から、母にモノをよく噛んで食べるように教えられていました。小学校の遠足のときも、その教えを守っていた私は食べるのが遅く、レジャーシートの上に1人取り残されてしまいました。あまりに食べるのが遅い私を見かねた友達が近寄ってきて「なんでそんなにモグモグしてるの?」と聞きました。「よく噛んだ方が美味しんだよ」と母に教わった言葉を復唱しつつ、私は弁当の卵焼きを1つ友達にあげました。幸い、学校行事の際に母が作る弁当は人一倍の量がありました。その様子を見ていた他の子たちも次々と近寄ってきて、みんなで母の弁当をよく噛んで味わい、いつしか仲良くなっていました。"モグモグくん"というあだ名は付けられてしまいましたが(笑)

モグモグくん さん

はじめてホヤを食べた日

親が好きで食べていたホヤを、初めて食べた日のことは忘れられない。見た目はもちろんのこと、甘いともしょっぱいとも言い切れないあの不思議な味。水を飲むとなぜか少し甘く感じた衝撃。海のパイナップルと言ったのは誰だ、と本気で腹が立った。それからも好奇心で父親が食べていると、一切れもらっては、うそでしょー、と盛り上がっていた。20年近くたって、今は大好物のホヤ。人間の味覚って不思議ですね。

つまみ さん

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つくってよかったな〜!と思わせてくれる満開笑顔

私は元々料理が得意なタイプでは決してないけれど、気づけば、もう7年ほど、家の料理当番として、子どものため、家族のためにごはんを作り続けている。料理が得意ではないといっても、食べること自体は好きなので、数あるレシピサイトを参照して、涼しい顔を気取りつつ料理に集中すれば、その日食べたいものを作ることができ、食べることができる。日々のごはん作りはそうして乗り切れるけれど、こどもの遠足の日のお弁当作りは時間との勝負だ。いつもよりも早起きをして、お弁当に入れられるくらいには冷ます時間も考慮して、2口コンロ(実際には3口あるが3口目がどうも使いづらい)を駆使して、脳内でシミュレーションしながら手を動かしていく。何度つくっても、同じ組み合わせも良くないだろうと新たなことに挑戦はしてしまう性格なので、毎回、勝負どきなことには変わりない。そうして何回も行事を乗り越えてきたが、初めてのお弁当のときには「時間が足りなくてフルーツだけ残しちゃった」なんてしょぼんとしながらお弁当箱を渡してきたこどもが、保育園の年長さんになってからは「みてみて!完食だよ」と空になったお弁当箱を見せてくれるようになった。そして、小学生にあがってから学童での夏休みの日々には「お弁当箱、一段じゃ足りないから2つに増やしてほしい」と不服そうに伝えてきた。ああ、この子はお弁当をもっと食べたいと思ってくれてるんだ……! 嬉しさと同時に、その成長に心が動いた瞬間でした。 それからは、一段のわっぱ弁当におかずを詰めて、スープジャーにはメインとなる炊き込みご飯やパスタ、オムライスを詰めて、小さなタッパーにフルーツを入れて持っていくようになりました。時に完食してこないこともあるけれど、持っていく朝、完成したお弁当を「見せて見せて〜」と覗いてくるこどものため、これからも時々、勝負のお弁当作りをがんばります!

おさつチップ さん

父と山菜

季節になると、父とよく山菜のたらのめを採りに行っていた。中学生ごろになると、父と話すことも見つかりづらくなっていたけど、山道の道中、ぽつりぽつりと会話をしたり、山菜が群生している場所を見つけた時に、一緒に声を出して喜んだのををいまでもよく覚えている。今も父は季節になると嬉しそうに自分で採った山菜を送ってくる。

雪解けしどけ さん

仙台アーケードの揚げかまぼこ

仙台のアーケードで売ってる揚げかまぼこが青春の味、あの頃はCD屋さんも賑わっていて、新星堂で時間をつぶしたりしながら友達とアーケードをぶらぶらしながらよくたべてた。 いろんなことを思い出す味。

たなばたん さん

京都滞在を延ばした本当の理由は、ごぼ天うどん?

大学1年生の12月28日、初めて一人旅に出た。場所は京都。 アルバイトで貯めたお金に余裕はなくて、宿泊はゲストハウスに。そのゲストハウスの人に教えてもらって、食べに入ったうどん屋さん。 そこで、ごぼ天うどんを食べて目を見開いた。ごぼうがシャクシャク、ホクホク。カレー塩がまぶしてあって、永遠に食べていられる絶妙なごぼ天なのだ。うどんとの相性も最高、悪いわけない、永遠コース。 感動した私は、ゲストハウスで人と知り合うたびにごぼ天うどんに誘い、新しく宿泊しにきた人をごぼ天うどんに誘い、ごぼ天の美味しさをただただみんなと共有し続けた。 そして、12月31日。この日には東京に帰る予定だったのに、「私、今夜も、ごぼ天食べていこうかな……」 その場にいたゲストハウスの友人たちは「本当にあのお店のごぼ天うどんが好きなんだねえ、付き合うよ」と笑ってくれた。 結局、2泊も延泊した。初めて、年越しを実家以外で過ごした冬だった。 私が延長したかったのは、ごぼ天を食べる時間だったのか、ゲストハウスで知り合った友人たちとの会話や時間だったのか。美味しさと楽しさをないまぜにして、東京に帰った。

ぐうぐう さん

オバァの作る沖縄そば

沖縄の北の果て・辺戸岬のオバァの家に訪れると、台所の方から何やら美味しそうな香りが漂っている。 匂いの出所の大鍋をのぞくと、黄金色のかつおだしと、大量の三枚肉(ラフテーのこと)とソーキ(スペアリブのこと)が顔をのぞかせた。これだけで、今日のお昼は「沖縄そば」だと確信できた。 「朝の7時からもう4時間は煮込んでるから、そろそろ最後の仕上げさぁね」 鍋をのぞく私にそう告げると、オバァは肉をどけて残ったスープをやかんに移し替える。 「お味噌汁やすまし汁はずうっと鍋で煮ているのに、沖縄そばのスープだけは、どうしてわざわざやかんに移すわけ?」 幼いころから長年疑問に思っていたことが、ふと、こぼれてしまった。 「肉の脂が溶けすぎてもダメ、スープが濁るし、肉の味もまずくなる。やかんに移せばそれを防げるし沸騰もしやすい」と、しわくちゃな笑顔と優しい声でそう告げるオバァを見た後で食べるそばは、いつになく優しい味がした。

ゆでたまご さん