アメリカンドーナッツ

アメリカ留学中、お金がなくて、安かったコンビニのドーナッツと牛乳だけ買ってお腹を満たしてた。シェアハウスの玄関先のブランコに揺られながら食べてたあのめちゃくちゃにあまいドーナッツを牛乳で流し込んだ味は、自分にとって特別な味。写真がたのしくてたのしくて、食費もフィルムや印画紙台に当てていたあの学生の日々は、今思うととても幸せな時間だった。

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地元を離れて初めて食べたゴーヤチャンプルー

6歳まで沖縄にいて、今は親の転勤で別の県にいる私。 沖縄での食卓には、時々母の作るゴーヤチャンプルーがのぼりました。 時々、というのも、その頃は私たち兄弟は、にがーいゴーヤを好んで食べることはなかったからです。ゴーヤチャンプルーといえば、大人のメニューでした。 その頃は引越しするだなんて考えたこともなかったから、全然知らない場所に引っ越すことになって驚きました。 県外に出て、めったに食べられなくなったメニューもあります。 それでも、ゴーヤチャンプルーはやはり食卓にのぼりつづけました。 大学生になったある日。栄養バランスも考えて食べなきゃなあ、と、ゴーヤチャンプルーを食べはじめました。 すると、コリコリ苦くて爽やかなゴーヤ、ふわふわの炒り卵、ジューシーなスパムが奏でるハーモニーに惚れ惚れしちゃいました! いつの間にか、私はゴーヤチャンプルーをもりもり食べられるほど大人になっていたのかしら、としみじみしました。 沖縄を出ていろんなことがありました。全く違う環境に慣れるために頑張ったり、夢ができたり、父が亡くなっなり。 目まぐるしい変化の中で、変わらない味のゴーヤチャンプルーを好きになった、という「変わったこと」が、とても嬉しかったです。 もう随分里帰りしていないですが、1口食べればすぐに沖縄に帰れる、母の作るゴーヤチャンプルーが大好きです。

銀河 さん

畑仕事の後のやきいも祭り

地元では、秋になると畑仕事をした後に、みんなで夕方集まって焼き芋を焼く。 落ち葉を集めてきて、穴をほって、畑でとれたさつまいもをアルミホイルで包んで蒸し焼きにする。 子供達も集まってきて、みんなで談笑しながら食べる。 ほっこりする好きな時間だ。

Q さん

台湾の鍋

実は鍋メニューが充実する国、台湾。出張時に仕事仲間から紹介され、ぜひ家族にも教えてあげたいとプライベートでも訪れるほどはまった鍋がある。長白小館というお店の酸菜白肉火鍋。漢字から想像できるように、酸味のある白菜の漬物と豚肉を重ねている。それだけでもおいしそうな見た目なのだが、席から離れたたれコーナーで10種類を超える調味料や具材を組み合わせ、好みのつけだれを調合するのが楽しい。いざ家族を台湾に連れてきてみると、八角の香りが苦手で食べられないメニューもあったが、この鍋は小さな子どもたちにも好評だった。もう10年近く前の家族旅行だが、いまでも振り返ると必ず話題にのぼるハイライトだ。

ヤマ さん

ニューオリンズ

ニューオリンズで、バーボンストリートでお酒を飲みながら、そこらかしこに響くジャズを楽しんだのはいい食の体験だった。ほかの場所では外でお酒を飲むのを禁止されていることもあって、特別な感じがしたのと、カフェからストリートから、BARから、そこら中に音楽があふれているあの空気感は、やっぱり他では味わえない体験だなぁと感じた。

ジャズー さん

おこげで学んだ母親の優しさ

中学校の修学旅行で、仲の良い友達同士の班で飯盒炊爨に挑戦しました。料理なんてしたことのない悪ガキたちでは綺麗にご飯が炊けるはずもなく、お米は真っ黒焦げに。でも、僕たちにはそれが妙においしく感じられ、家に帰ってからも母親に"おこげ"を注文しました。「あんた、家では焦げを作る方が大変なのよ」と一度は断られたものの、不貞腐れる僕を見て"おこげ"のある焼きおにぎりを作ってくれました。時が経ち、家庭を持って料理をするようになると、母親の気持ちが分かるようになりました。母親を見習って、息子からの料理のリクエストにはなるべく応えるようにしています。

こしらず さん

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妻とはじめて喧嘩した青春のフグ刺し

九州と本州を結ぶ関門橋がある街、下関市。そこにぼくは生まれ育ち、今年からまた、ここで働いている。高校までずっと地元で過ごしてきた僕は、大学進学を機に山口市内の大学に進んだ。教員採用試験に受かってこの春、4年ぶりにこの現地の学校に帰ってきて教師になった僕は、週末になるといつも関門海峡が見える市場に出かける。海を眺めながらイキのいい海鮮を食べる。その中でもやはり、フグは僕に取っては避けられない、小さい頃から慣れ親しんだ味だ。どんな店で食べるご飯よりも、ここで食べるフグ刺しに勝るものはない。大学時代、男らしさを見せるために広島出身の彼女を地元に連れてきて、ふぐ差しを箸で一気にすくって豪快に一口で食べたらドン引きされ、大げんかしたことがあった。それも淡く切ない青春の思い出だ。当時と同じように、市場で買ってきたフグを箸で一気にすくう。口いっぱいに頬張り、幸せを噛み締める。その隣には、大学時代と変わらない笑顔と、太陽に反射した金属のリングが光って見えた。もうすぐ僕は結婚する。結婚してからも、子どもができてからも、僕は当時と変わらないこの味を、大好きな地元で、大好きな家族と一緒に味わうだろう。

たっき〜 さん

ぷーぱっぽんかりー

スコールが降りやんだばかりのむっとするバンコクで、仕事を終えた後、先輩、後輩と「メシに行こう」と市内へ。おススメのお店があるからと彼らに連れていかれたのはソンブーンというシーフードのお店だった。ここの「ぷーぱっぽんかりー」ってカレーやばいから、と自信満々。ぷーぱっなんとかって呪文みたいだな、よどみなくメニュー名を読み上げる感じが通ぶってんな、そもそもこの2人そんなに食通だったか?と訝しみつつカレーを待った。やがて大皿がテーブルに運ばれてきた。ぶつ切りされた大きいカ二がどーん!と真ん中に盛られ、そこにスパイス香るややスーピーなカレーがさーとかけられ、その上にふわとろっとたまごがとじられている。パンチ強いビジュアル。確かにうまそうだ。どうよ、とおらついた様子でニヤついている2人に苛立ちをおぼえつつ、いざ食べ始めるともう止まらない。めちゃうまい。くせになる。何も話せない。カニの殻がもどかしいいけど、どうでもいい。気が付けば3人が無言で「プーパッポンカリー」をがっついていた。食後「うめーよな」と先輩に言われ、「サイコーっすね」とここは完敗を認めざるを得なかった。同じ皿の「プーパッポンカリー」を食べた先輩、後輩とはその後も長ーい付き合いが続いている。

ヒロ さん

大阪のおでん屋さんのうどん

20代前半、社会人になって間もないころ、慣れない出張で大阪へ。緊張しながらも取引先と日中の仕事を無事終えることができた。夜は打上げで大いに盛り上がり、1軒で3時間は過ぎていただろうか。すでにだいぶお酒も呑んでいた。店を出ると、「締めの一杯行こうぜ」と言われ、まだ呑むのかよ、勘弁してくれよ、と思いつつ千鳥足で歩き回り、営業しているおでん屋さんをみつけ飛び込んだ。とりあえずじゃないけどビールとおでんを少々頼み再度乾杯。そこで口にしたおでんのおだしが・・・うまい。東京と違う。地域によっておだしが異なるという知識はあったが、体験したのは初めてだった。さらに若かった私はまたお腹がすき始めていることに気づき、おでんでは飽き足らず、何か追加注文しようと思い立った。「うどん頼んでいいすか」と取引先に伝えると、「いいよ、しっかしお前、よく食うなぁ―」と上機嫌。でてきたのはシンプルきわまりない素うどんだったが、これが五臓六腑にしみわたるうまさ。そもそも、なんでおでん屋にうどんがあるんだ?、東京にはおでん屋ってないよなあ、大阪なんかいいな、と思いながらうどんをすすってあっという間に完食。取引先は半寝状態。何だか大人の階段を上った気がした夜だった。

河童 さん

美味しくないけど幸福な旅の味

旅行に行った先で、どの料理も味がいまいちな観光地の料亭に入ったことがある。著名人のサインだらけで、店内も満員、入った瞬間は期待感で一杯だったんだけど、来る料理来る料理、味がほんとうにいまいち。ただ満員の店内で美味しくないと口に出すわけにもいかず、最初は静かに食べていたんだけど、そのうち、美味しくない料理を、満員の店内でみんなが静かにたべている状況が、たまらなくおかしくなってきてしまい、一人で笑いを必死でこらえてた。ふと家族をみると、なぜかみんな笑いをこらえた顔をしている。弟がついに笑い出してしまったのを皮切りに、家族でたくさん笑ったのを覚えている。美味しくないのにとても幸せだった食事は、最初で最後だった。雪が降っている海辺の風景もよく覚えている。

おいしい思い出 さん

徳島で食べた大きい金時豆の入ったお好み焼き

10年ほど前。阿波踊りで訪れた徳島。その日仕事で初めて会った、二回りくらい年上の気怠い感じのおじさん2人。見物の合間に「ちょっと休みますか」と連れていかれたのは街中の鉄板屋らしきお店だった。当然のように出てきた銀色のカップにはお好み焼きの具材が入っているようだが何だか様子が違う。赤茶色の大きい豆が入っているのだ。これなんですか?と聞く間もなくビールが出てきて乾杯!となり、これまたあっという間にお好み焼き「風」のものが焼きあがって、どうぞ、とすすめられるままに口にしたら…これがうまかった。後に知ったが豆玉と言うご当地メニューで、豆は甘く煮た金時豆。2人のおじさんのことは顔も名前も忘れてしまったが、甘じょっぱい徳島のお好み焼きは記憶に刻まれている。もうすぐ今年も8月、阿波踊りの季節だ。行こうかな、徳島へ。

ケイン さん