なんちゃってピザ

地元はドがつくほどの田舎。 お米が無くなってしまい、買いにも行けない事態に陥った母が作り始めたのは「なんちゃってピザ」 母は貧乏ごはんなんて言いながら、そのピザは忘れられないほど美味しかった。 手際よくクレープ生地のような液を作って焼き、その上に生野菜とトマトソース、チーズをトッピング。 小さい頃は分からなかった母の知恵と愛情がたっぷり詰まっていた。 ひとり暮らしをしている今、上手くいかぬ事もある。 でも、実家に帰れば、知恵と愛情が詰まった母の味が待っている。 それだけで大変なことも乗り越えられる、そんな話。

さくらねこ

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娘と海の家

2番目の子どもが生まれた日、お姉ちゃんになる娘と閉まりかけの海の家でかき氷を食べた。もうお客さんもいなくなって、夜の海は真っ暗で。波の音を聞きながら、いつもよりも豪華なかき氷を二人で買って、おめでとうといってお祝いした。忘れられない夏の思い出。

おじちゃん さん

深夜の家系ラーメン

後輩はいつも決まって深夜に急に電話をかけてきて、「先輩今からラーメン行きませんか?」と誘ってきた。 あまりお腹がすいていなくても、期末試験で忙しくてもついつい誘いにのって食べにいってしまう。 何を話したのか、まったく覚えていない。たぶん内容のない話ばかりだったのだろう。 でも過去に戻れるとしたらそんな時間に戻りたいなと思う。

ラジコ さん

おじいちゃんのくじら汁

おじいちゃんの家に行くと、おじいちゃんが時々食べていた、茄子とくじらの白いとこがはいったくじら汁。子供はなぜかあまりもらえなくて、おねだりして少しだけ分けてもらっていた。おじいちゃんもおばあちゃんもすでに他界してしまったけど、地元に帰っておじいちゃんが住んでいた家のあたりを通ると思い出すのは、おねだりして少し分けてもらったあの時の味と風景。

けっぱれ さん

一学期締めくくりの紅イモアイス

7月の中頃、終業式の最後に食べる給食には決まって沖縄のアイスクリームチェーン“ブルーシール”の紅イモアイスが入っている。 沖縄の芋の特徴である素朴な甘さと粘りが癖になるそのアイスは、冷房がない教室で4か月もの間勉学に勤しんだ小中学生の努力を讃えるような逸品であり、“あまりもの”が出てしまえば、クラス全員でジャンケンによる争奪戦が起こっていた。 この喧騒と紫色のアイスクリームが、県内の児童生徒に夏休みの訪れを告げるのだ。

ゆでたまご さん

はじめてホヤを食べた日

親が好きで食べていたホヤを、初めて食べた日のことは忘れられない。見た目はもちろんのこと、甘いともしょっぱいとも言い切れないあの不思議な味。水を飲むとなぜか少し甘く感じた衝撃。海のパイナップルと言ったのは誰だ、と本気で腹が立った。それからも好奇心で父親が食べていると、一切れもらっては、うそでしょー、と盛り上がっていた。20年近くたって、今は大好物のホヤ。人間の味覚って不思議ですね。

つまみ さん

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伊豆大島のうつくしいべっこう丼

去年学生時代の友人と訪れた伊豆大島。東京竹芝埠頭から夜間の大型客船の波に揺られ、朝方到着したのは自然が壮大な島の景色でした。まだ眠い目をこすりながら朝ごはんのお店を探すと、港の近くに小ぢんまりとした定食屋さんを発見。朝早い時間にも関わらく笑顔で店主さんが迎え入れてくれ、オススメされた「べっこう丼」を注文することに。 伊豆大島の郷土料理という「べっこう丼」は、新鮮な白身魚をお刺身をピリリと辛い島唐辛子入りの醤油だれに漬け込んで丼仕立てにしたもの。朝ごはんにもぴったりなおいしさに感動していると、「すごく簡単だからお家でも作れるよ」と丁寧に作り方を教えてくれるやさしい店主さんでした。

らじぱんだ さん

お母さんのカニクリームパスタ

誕生日や特別な日は自分が大好きなカニのクリームパスタにしてくれる両親。2人でカニを買ってきて、仕込んで仕上がる味は絶品。大きくなっても、それがずっと好きだと思って作ってくれる。でも、自分的には「ちょっと飽きてきたかな」と思うけど、毎回得意げに「今日はカニクリームパスタよ」と言ってくる両親の顔を見ると言えないし、愛されているなと改めて感じるそんな”ごはんメモリー”でした。

キュータロー さん

美味しくないけど幸福な旅の味

旅行に行った先で、どの料理も味がいまいちな観光地の料亭に入ったことがある。著名人のサインだらけで、店内も満員、入った瞬間は期待感で一杯だったんだけど、来る料理来る料理、味がほんとうにいまいち。ただ満員の店内で美味しくないと口に出すわけにもいかず、最初は静かに食べていたんだけど、そのうち、美味しくない料理を、満員の店内でみんなが静かにたべている状況が、たまらなくおかしくなってきてしまい、一人で笑いを必死でこらえてた。ふと家族をみると、なぜかみんな笑いをこらえた顔をしている。弟がついに笑い出してしまったのを皮切りに、家族でたくさん笑ったのを覚えている。美味しくないのにとても幸せだった食事は、最初で最後だった。雪が降っている海辺の風景もよく覚えている。

おいしい思い出 さん

偏食な父が好きなもの

子どものころ、焼き魚が食卓に乗ったことはない。お刺身も、お寿司も。 唐揚げ、親子丼、焼き鳥など鶏肉もめったに食べなかった。肉は牛、次いで豚。これのみ。 母は栄養バランスを考え、子どもたち用に工夫して父と異なるごはんをつくってくれた。大変だったと思う。感謝しかない。 父は偏食だった。元をたどれば父方の祖父が偏食だった。牛肉が好きで、90歳を超えてもステーキをよく食べていた。 週末。父はよくラーメンやそばの出前をとった。月に1回くらい、少し遠出して父がお気に入りの中華そばも食べに行った。ランチはお子様ランチのあるファミレスによく連れていってくれた。ハンバーグ、ステーキ、コロッケ、オムライス、ナポリタン・・・どれも父自身が好きだったから。 平日の夜。ビールに厚揚げ、生ショウガの味噌合え、スルメイカにマヨネーズ(唐辛子かけ)などをアテにしていた。下戸なのに。ちびちびと吞んでいた。 ああ、結局ぜんぶ好きになったものばかり。ただ、焼き魚もお刺身もお寿司も大好きになった。好みは受け継いだが、私は偏食家ではない。

あっちゃん さん

みそピー

給食にときどき出てきたみそピーは、味噌と砂糖とピーナッツを練り合わせた、少し甘くてしょっぱい食べ物で、小さなビニールのパッケージに入っていた。私は甘いとしょっぱいを同時に感じるのが嫌で、なんとなく苦手だった。それなのに、給食と言えば思い出されるみそピー。大人になった今なら、美味しく感じたりするのだろうか?

よく噛んで食べよう さん